マグロ船釣りの始め方|種類・料金・タックル選びの全知識

「一生に一度は釣ってみたい」多くの釣り人が憧れるターゲット、それがマグロです。テレビや雑誌で目にする数十キロ、時には100キロを超える巨大な魚体とのファイトは、まさに釣りの醍醐味といえるでしょう。しかし、その一方で「マグロ船釣りは専門的で敷居が高い」「どのような道具を揃え、いくら費用がかかるのか見当もつかない」といった理由から、挑戦をためらっている方も少なくありません。
この記事では、そのような疑問や不安を解消するために、マグロ船釣りに関する情報を体系的に整理し、専門的な知識に基づいて解説します。対象となるマグロの種類から、具体的な釣法、必要なタックル(釣り道具)、料金相場、そして信頼できる釣り船の選び方までを網羅的にご紹介します。本記事を最後まで読めば、マグロ船釣りへの漠然とした憧れが、実現可能な具体的な計画へと変わるはずです。これからマグロ船釣りを始めたいと考えている全ての方にとって、信頼できるガイドとなることを目指します。
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マグロ船釣りとは?初心者が知るべき3つの基本
マグロ船釣りは、遊漁船に乗って沖合へ出て、キハダマグロやクロマグロといった大型の回遊魚を狙う釣りです。この釣りの最大の魅力は、他の釣りでは味わうことのできない強烈な引きと、巨大な魚を釣り上げた時の圧倒的な達成感にあります。ここでは、まずマグロ船釣りに挑戦する上で知っておくべき3つの基本を解説します。
主な対象魚は「キハダマグロ」と「クロマグロ」
日本近海の船釣りで主にターゲットとなるのは、「キハダマグロ」と「クロマグロ(本マグロ)」の2種類です。それぞれ特徴や釣れる時期、エリアが異なり、どちらを狙うかによって戦略が変わります。
釣り方には複数の種類がある
マグロ船釣りには、撒き餌で魚を寄せる「コマセ釣り」、ルアーを使う「ルアー釣り」、生き餌を使う「泳がせ釣り」など、様々なアプローチが存在します。釣り船やエリア、時期によって主流となる釣法が異なるため、事前に確認することが重要です。
初心者でも挑戦は可能
「一般人には無理」「特別な技術が必要」というイメージがありますが、結論からいえば、初心者でもマグロ船釣りに挑戦することは十分に可能です。多くの釣り船では、経験豊富な船長がサポートしてくれるほか、必要なタックル一式をレンタルできるプランが用意されています。まずはレンタルタックルを利用し、初心者向けのプランがある船宿を選ぶことで、安全かつ安心して大物釣りの第一歩を踏み出すことができます。
【対象魚別】キハダマグロとクロマグロの特徴と比較
マグロ船釣りで狙う主な対象魚、キハダマグロとクロマグロは似ているようで異なる特徴を持っています。どちらをターゲットにするかで、シーズンやタックル、釣り船選びも変わるため、その違いを正確に理解しておくことが重要です。
項目 | キハダマグロ | クロマグロ(本マグロ) |
特徴 | 第二背ビレと尻ビレが黄色く、鎌状に長く伸びるのが特徴。スマートな体型をしている。 | 全体的に黒みを帯びた体色で、ずんぐりとした重量感のある体型。「海のダイヤモンド」とも称される最高級魚。 |
大きさの目安 | 20kg〜60kgクラスが主なターゲット。100kgを超える個体も存在する。 | 30kg〜100kg超級まで幅広く、200kgを超える「超大物」も夢ではない。 |
引きの強さ | スピードが非常に速く、長距離を走るのが特徴。持久力に優れている。 | とてつもない重量感とパワーが特徴。直線的で重い、トルクフルな引きを見せる。 |
主な釣り場 | 神奈川県(相模湾)、沖縄県、三重県、高知県など、比較的暖かい海域。 | 青森県(津軽海峡)、北海道、三重県、長崎県(壱岐・対馬)など、より広範囲に分布。 |
関東での主なシーズン | 夏から秋(8月〜11月頃)が最盛期。相模湾のキハダマグロは特に人気が高い。 | 【仮説】関東近海ではキハダマグロに比べて狙える機会は限定的。津軽海峡などでは夏から冬にかけてがシーズンとなる。 |
キハダマグロは、そのスピーディーな引きからゲームフィッシュとして人気が高く、特に夏場の相模湾では多くの釣り船で狙うことができます。一方、クロマグロは桁外れのパワーと希少性から、多くの釣り人の最終目標とされる存在です。挑戦したいエリアや時期に応じて、ターゲットを定めましょう。
マグロ船釣りの主要な3種類の釣法と仕掛け
マグロ船釣りには、対象魚の習性や海の状況に合わせて、主に3つの釣法が用いられます。それぞれの釣法にメリット・デメリットがあり、船宿によって採用している釣法が異なります。ここでは、各釣法の特徴と基本的な仕掛けについて解説します。
1. コマセ釣り
コマセ釣りは、オキアミなどの撒き餌(コマセ)を詰めたカゴを海中に沈め、撒き餌でマグロの群れを船に寄せ、その中に付け餌(食わせるためのエサ)を同調させて食わせる釣法です。特に神奈川県の相模湾におけるキハダマグロ狙いで主流となっています。
- メリット: 魚を寄せる効果が高く、船全体で釣果が上がりやすい。比較的シンプルな仕掛けで挑戦できるため、初心者にも向いています。
- デメリット: コマセの準備や管理が必要。船長の指示棚(魚がいる水深)に正確に仕掛けを合わせる技術が求められます。
- 基本的な仕掛け: PEライン(ポリエチレン素材を編んで作られた釣り糸のこと)の先に天秤とコマセカゴ、その先にクッションゴムを介してハリス(針を結ぶ糸)、そして針を結びます。付け餌はコマセと同じオキアミを使用します。
2. ルアー釣り(キャスティング・ジギング)
ルアー釣りは、疑似餌(ルアー)を用いてマグロを狙う、非常にゲーム性の高い釣法です。水面でマグロが小魚を追い回している状態(ナブラ)を狙ってルアーを投げる「キャスティング」と、金属製のルアー(メタルジグ)を海底近くまで沈めて誘う「ジギング」の2つに大別されます。
- メリット: エサを準備する必要がなく、タックルが比較的シンプル。魚がルアーに襲いかかる瞬間が直接見えるなど、視覚的な興奮が大きいのが特徴です。
- デメリット: ナブラが出なければ釣果に繋がりにくい(キャスティング)、体力を消耗しやすい(ジギング)などの側面があります。
- 基本的なタックル:
- キャスティング: 8フィート前後の専用ロッドに、大型スピニングリール、PEライン6〜10号、100〜200ポンドのリーダー(道糸の先につける太い糸)、100g前後のフローティングペンシルなどを使用します。
- ジギング: 6フィート前後のジギングロッドに、大型スピニングリールまたはベイトリール、PEライン4〜6号、80〜150ポンドのリーダー、200〜400gのメタルジグを使用します。
3. 泳がせ釣り(フカセ釣り)
泳がせ釣りは、イワシやサバなどの生き餌を針につけて泳がせ、それをマグロに捕食させる釣法です。生き餌の自然な動きがマグロの捕食本能を強く刺激するため、特に警戒心の強い大型のクロマグロ狙いで非常に有効とされています。
- メリット: 生き餌の威力は絶大で、超大型のマグロがヒットする確率が高い。ルアーやコマセに反応しない状況でも口を使わせることがあります。
- デメリット: 生き餌の確保や管理が必要で、エサ代が別途かかることが多い。アタリ(魚が食いついた信号)が出てから食い込ませるまでの駆け引きが難しい側面もあります。
- 基本的な仕掛け: 太いPEラインに、リーダー、ハリスを結び、大型の針に生き餌を付けます。シンプルな仕掛けですが、各接続部分の強度が極めて重要になります。
【釣法別】マグロ船釣りに必要なタックルの選び方
マグロとのファイトは極めて過酷なため、タックルには高い強度が求められます。しかし、最高級の道具を最初から全て揃える必要はありません。ここでは、釣法ごとに求められるタックルの基本的なスペックと、初心者が賢く道具を準備する方法を解説します。
結論として、初心者の場合はほとんどの釣り船で用意されている「レンタルタックル」の利用を強く推奨します。マグロ用タックルは高価なものが多く、まずはレンタルで釣りを体験し、本格的に続けると決めてから自身のスタイルに合ったものを購入するのが合理的です。
もしご自身のタックルを揃える場合は、以下のスペックが目安となります。
釣法 | 竿(ロッド) | リール | 道糸(PEライン) |
コマセ釣り | 2m前後の専用ワンピースロッド。80号程度のオモリ負荷に対応するもの。 | 電動リール(シマノ8000番、ダイワ800番相当以上)。手巻きの場合は大型レバードラグリール。 | 8号〜12号を300m以上 |
キャスティング | 7.5〜8.5フィートのマグロ用キャスティングロッド。150g前後のルアーをキャストできるパワーを持つもの。 | 大型スピニングリール(シマノ18000番、ダイワ8000番相当以上)で、ドラグ性能が高いもの。 | 8号〜12号を300m以上 |
ジギング | 5.5〜6.5フィートのジギングロッド。300g以上のジグを操作できるパワーを持つもの。 | 大型スピニングリールまたはジギング用ベイトリール。巻き上げパワーが重要。 | 4号〜6号を400m以上 |
泳がせ釣り | 泳がせ釣り専用ロッドまたは大物用スタンディングロッド。 | 超大型レバードラグリール(シマノ50番、ダイワ70番相当など)。 | 20号〜30号を500m以上 |
これらのタックルは非常に高価なため、購入後にスタイルが合わなかった場合、処遇に困ることも少なくありません。
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マグロ船釣りの料金相場と内訳
マグロ船釣りに挑戦する際、最も気になるのが費用です。料金はエリアや船、プランによって大きく異なりますが、事前に相場と内訳を把握しておくことで、安心して計画を立てることができます。
料金の目安は、1人あたり約15,000円から40,000円程度が一般的です。ただし、これはあくまで「乗り合い船」の乗船料金であり、チャーター(仕立て)や遠征便、またエサ代やレンタル代によって総額は変動します。
料金の主な内訳
- 乗船料:
- 乗り合い船: 他の釣り人と一緒に乗船するスタイル。関東のキハダマグロ狙いでは15,000円〜25,000円程度が相場です。
- チャーター(仕立て)船: グループで船を貸し切るスタイル。料金は船の大きさや時間によって決まり、総額100,000円〜200,000円程度が目安です。人数で割れば一人当たりの負担は抑えられます。
- レンタルタックル代:
- 竿・リールセットで3,000円〜5,000円程度が相場です。電動リール用のバッテリーも含まれているか確認しましょう。
- エサ・ルアー代:
- コマセ釣りの場合、コマセ・付け餌代として3,000円〜5,000円程度が別途必要になることが多いです。
- 泳がせ釣りの生き餌は時価で、高価になる場合があります。
- ルアーは基本的に各自で用意します。1個あたり3,000円〜8,000円程度が目安です。
- その他:
- 氷代(無料の場合も多い)、ライフジャケットのレンタル代(乗船料に含まれることがほとんど)など。
例えば、神奈川県の相模湾で乗り合い船を利用し、コマセ釣りでキハダマグロを狙う場合、乗船料(約20,000円)+レンタルタックル(約3,000円)+エサ代(約3,000円)で、総額26,000円程度が一つの目安となります。予約時に料金に含まれるもの、含まれないものを必ず確認することが重要です。
失敗しないマグロ釣り船の選び方|5つのチェックポイント
マグロ船釣りは、船長の操船技術や判断が釣果を大きく左右します。また、長時間過ごす船上の快適性や安全性も極めて重要です。ここでは、数ある釣り船の中から、自分に合った信頼できる船を選ぶための5つのチェックポイントを解説します。
釣果情報をこまめに確認する
ほとんどの釣り船は公式ウェブサイトやSNSで最新の釣果情報を公開しています。釣果が出ているかはもちろん、「どのような釣り方で」「どのくらいのサイズのマグロが」「船中何本上がったか」といった詳細な情報を確認しましょう。安定して釣果を上げている船は、船長の腕が良い証拠といえます。
船の設備が整っているか
長時間の釣りになるため、船の設備は快適性に直結します。特に、清潔な水洗トイレの有無は女性や初心者にとって重要なポイントです。また、魚群探知機の情報を客席モニターで見られる「探見丸」システムや、ロッドホルダー、海水循環ポンプなどの設備が整っていると、より快適に釣りに集中できます。
船長の専門性と人柄を調べる
船長がマグロ釣りを専門、あるいは得意としているかを確認しましょう。マグロの生態や海域に精通している船長は、的確なポイント選びや指示で釣果へと導いてくれます。また、ウェブサイトのブログや口コミサイトで、船長の指導が丁寧か、船内の雰囲気が良いかといった人柄に関する情報を集めることも、当日を楽しく過ごすために重要です。
初心者向けのプランやサポート体制があるか
初めて挑戦する場合は、「初心者歓迎」を明記している船や、レンタルタックルが充実している船を選びましょう。船長やスタッフが釣り方を丁寧に教えてくれる船であれば、安心して挑戦できます。乗船前に電話で「初めてマグロ釣りに挑戦するのですが」と伝え、その際の対応を確認するのも良い方法です。
料金体系が明瞭であるか
乗船料の他に、レンタル代、エサ代、氷代などが含まれているのか、それとも別途必要なのかをウェブサイトや電話で明確に確認しましょう。後から予期せぬ追加料金が発生すると、せっかくの釣りが後味の悪いものになってしまいます。「総額でいくらかかりますか?」と直接質問するのが最も確実です。
これらのポイントを総合的に判断し、安心して任せられる船を選ぶことが、大物への近道となります。
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マグロの船釣りに関するFAQ
Q1: 一般人でもマグロを釣ることはできますか?
A1: はい、可能です。多くの遊漁船がマグロ釣りプランを提供しており、初心者向けのサポートやレンタルタックルも充実しています。船長の指示に従えば、釣り経験が少ない方でも十分にチャンスがあります。
Q2: マグロ船釣りの値段は、総額でどれくらいかかりますか?
A2: エリアやプランによりますが、関東近郊の乗り合い船で道具一式をレンタルした場合、乗船料・レンタル代・エサ代などを合わせて1人あたり総額25,000円〜35,000円程度が一般的な目安となります。
Q3: 関東(神奈川・相模湾など)でのマグロ釣りの時期はいつですか?
A3: 関東の相模湾では、主にキハダマグロをターゲットとし、水温が上がる8月頃から11月頃までがメインシーズンとなります。特に9月、10月は最も盛り上がる時期です。
Q4: 初心者がマグロ釣りに挑戦する場合、最低限何を持っていけばよいですか?
A4: 釣具をレンタルする場合、最低限必要なのは「服装」「飲食物」「クーラーボックス」です。服装は濡れても乾きやすく、体温調節が可能なもの(レインウェアは必須)。足元は滑りにくい長靴やデッキブーツが安全です。帽子、サングラス、日焼け止めも忘れないようにしましょう。
Q5: 本マグロ(クロマグロ)が釣れる釣り船はありますか?
A5: はい、あります。クロマグロを専門に狙う釣り船は、青森県の津軽海峡や長崎県の壱岐・対馬エリア、三重県などに多く存在します。ただし、クロマグロは資源管理が厳格に行われている魚種であり、釣りが可能な期間やサイズ(採捕禁止サイズ)に制限があるため、必ず事前に確認が必要です。
まとめ
本記事では、憧れのターゲットであるマグロを船釣りで狙うための基礎知識を、専門的な視点から体系的に解説しました。マグロ船釣りは、決して手の届かない特別な釣りではありません。正しい知識を身につけ、適切な準備をすることで、初心者の方でも十分に挑戦が可能です。
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 対象魚: 主にキハダマグロとクロマグロ。それぞれ特徴とシーズンが異なるため、狙いを定めることが第一歩です。
- 釣法: コマセ、ルアー、泳がせ釣りが主要な釣法。エリアや船によって主流が異なるため、自分に合ったスタイルを選びましょう。
- タックル: 初心者は無理に購入せず、信頼できるレンタルタックルを利用するのが賢明です。
- 料金: 乗船料のほか、レンタル代やエサ代を含めた総額を事前に把握し、予算計画を立てることが重要です。
- 船選び: 釣果情報、設備、船長の専門性、初心者へのサポート体制、料金の明瞭さの5つのポイントで総合的に判断することが、釣行の成否を分けます。
巨大なマグロとの出会いは、間違いなく一生の記憶に残る体験となるでしょう。この記事が、皆様の「最初の一匹」への挑戦を後押しする一助となれば幸いです。安全に留意し、ルールとマナーを守って、素晴らしい船釣りの世界を楽しんでください。